【ジブリ『風立ちぬ』記念】ホリタツ堀辰雄で青空文庫を中心にブクログ棚こさえた【映画はまだ観てない】その1




無沙汰しております。社主代理持田です。諸々多忙につき変電活動ままなっておりませんが!今夏は「千年猛暑」だそうですね!千年に一回って言って来年も暑かったらと気が気じゃありません!そんな暑い最中にジブリ映画『風立ちぬ』が公開されました。宮崎駿72歳ですから本作が遺作になるかの腹も括ったものだろうと思われます。その意味では執筆当時32歳堀辰雄の「風立ちぬ、いざ生きめやも。」の声音とは違う響きを放ちそうでありますね。

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こちらキャプションでもあるように「堀越二郎、堀辰雄に敬意を込めて。」ということでタイトルも『風立ちぬ』ヒロインも「菜穂子」であるので堀辰雄作品インスパイアの零戦設計者堀越二郎の物語であることは皆さんの知る所であります。

僕も早速観に行きたいと思っておりながらまず観る前に“ホリタツ”堀辰雄でブクログ文脈棚こさえてしまおうかなと思い立ってしまいました。

本屋さんでも『風立ちぬ』棚が盛んに花咲かせていることでありましょう。映画の感想もいいけど、まずは「堀辰雄」関係本で結構いろいろ掘れるので変電社もここはちゃんと紹介せねばと思った次第です。堀越二郎関連はまた別の機会に。機体ではなくもう一人の偉大なるエンジン設計者、中島飛行機の中川良一なんかも絡めたい!

ちなみに先だって変電社社中でもあり、“BOOKSHOPLOVER ~本屋好き~” “本棚あそび” 運営の和氣氏に本棚インタビューを受けて(本棚インタビューvol.2:変電社社主代理の持田泰さんは青空文庫から選んだ25冊で「都市と旅とその時代」を語る)その際に「青空文庫」について私が「文脈がないから今は分かる人だけ分かるって形になっていて非常にもったいない」趣旨を話したので、今回も文脈形成に挑んだものの試行錯誤していたら棚の展開が違うようになってしまい、前回の青空文庫オンリー棚になる訳に行かず、古書・新刊含んだ形で棚形成されてしましました。

が、ままよ!と公開してしまいます。


これが青空文庫から始まる”ホリタツ”文脈棚でありますが、この電子・新刊・古本のモザイク感も「時代」だろうと居直りました。また今回の文脈棚作成しててつくづく思ったのですが、つまるところ「文脈」「コンテクスト」ってのは何かと考えたら作品を介した作家のソーシャルグラフと捉えてしまうのも一手だなとにわかに合点した次第です。電子だけに縛ってその文脈の脆弱さに甘んじることはないなと。

さて棚の流れをざっと俯瞰しますと、堀辰雄作品青空文庫を中心に一段目に絞り、堀辰雄と云えばこのモデル問題なくして語れない師・芥川龍之介(2段目)と「越し人」片山廣子(3段目)の「軽井沢の恋」までの文脈を語り、4段目で今少し深掘りして堀辰雄を巡っての作品批評作家論を放り込んでますが、その中の川村湊『物語の娘ー宗瑛を探して』には片山廣子の娘「総子」であり戦前の閨秀作家「宗瑛」作品というレアモノが収録されています!その流れで5段目で芥川龍之介の死を外から見た人の派生作品と堀辰雄の恋を巡っての第三人物の派生作品で、先の「宗瑛」を巡って堀辰雄をナイフで追いかけ回した(かもしれない)戦前植民地化韓国における悪名高き「親日派」金文輯『ありらん峠』古書と、その金文輯の汚穢に満ちた悪辣なる人生を活写したモデル小説、金史良『天馬』。これは青空文庫にあったので、それで〆ました。この夏がっつり堀辰雄を課題図書で行ってみようという方はまずここの青空文庫からでも読んでみてください。

1段目「堀辰雄」代表作を中心に青空文庫棚

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まず堀辰雄作品ですが、現在2013年7月21日現在青空文庫には142作品登録されております代表作もほぼ勢揃いなので、皆さん堀辰雄読むなら青空文庫そのものを当たればいいかと思います。これも和氣氏の本棚遊びインタビューで答えましたが、各電子書籍ストアの青空文庫コンテンツは青空文庫収録作品のコンプリートではないので、今回紹介した『水族館』なんて初期堀辰雄個人的オススメ都市小説がないなど結構恣意的です。なので環境としては、i文庫またPCで読むならばChromeアドオンの青空縦書きリーダーあたりをお勧めしたいところです。

なわけで堀辰雄作品レビュー軽くまいりますが、まずその前にジブリ『風立ちぬ』が実在人物堀越二郎とあの堀辰雄文学の混交フィクション作品であることに対して、個人的な違和感がないわけでもないので率直に表明しておきたいと思います。

宮崎駿監督がどこかのTVインタビューでなぜ堀辰雄かと聴かれて「あの時代を懸命に生きた作家だからです」的なことを語っていたのですが、俗世で汚れて40年の僕の勝手な見立てからすると、航空産業イコール最先端科学イコール軍需産業の生き馬の眼を抜くようなテクノクラートが跋扈する1930年代真っ只中をヘビー・デューティに駆け抜けざるえなかった堀越二郎のタフな「時代」の現場からは最も遠い領域に退却し、下手すれば「時代」なんてあってもなくてもよいかのように扱えた「芸術派」であったのが良くも悪くも堀辰雄だろうという偏見がないわけでもなく、例えば、今回ブクログ棚でも取り上げる三島由紀夫が、堀辰雄『菜穂子』登場人の著者分身に対してこんな風に評してます。

都筑が病身でなければ彼のような存在は奇怪なのだ。病身という一事によってこんな存在が容認される(すなわち兵隊に取られないですむ。)知的無力感が逆に正当化される。
ー「現代小説は古典足り得るか」『裸体と衣裳 』三島由紀夫

もっとも宮崎駿はここらは分かった上でやっているんだろうとは思わないでもなく、まあ映画観てない癖に野暮天でありますが、ジブリはそもそもで『千と千尋』風呂屋「油屋」という屋号は堀辰雄ゆかりの軽井沢のホテルであったり、またその作風の無国籍性ハイカラ感も含めて堀辰雄的なるものに充ちており、さらに飛行機好きの宮崎駿だから「堀越二郎」って単にそんな所から接合を夢見られた今回の『風立ちぬ』かもしれません。誤解なく言い添えておくと、それが駄目とは思いません。

そんなわけで僕の若干の違和感の表明というところで脇道それましたが、話戻して堀辰雄『風立ちぬ』から一気に5作の堀辰雄作品レビューでまいます。

そんなわけで堀辰雄作品レビュー

堀辰雄は「私は一度も私の経験したとおりのことを書いたことはない」(昭和9年『小説のことなど』)と表明していたりするものの(クレタ島人のパラドックスにも聞こえなくもない)、モデル小説を多数残しておりかえってそれで有名になった感もある作家で、『風立ちぬ』おいてヒロイン節子は実在の婚約者「矢野綾子」に相違ないわけですが、作品通りかどうかまでは約束できないまでも24歳の若さで夭折しております。ネタばれになる恐れもあるのでその内容に関して語るのを控えます。映画とどこまで展開一緒なのか僕も知りませんが!

作品は先の指摘した時代から退却した「サナトリウム」領域における静謐さと節子亡き後の存在の切実さに満ちており、またホリタツ描く所の孤独は『菜穂子』における都筑明の「冬の旅」でもそうですが何処か涙眼なれど悲壮感とは違う使命的な巡礼的な何かで、作中でも引用されるリルケを強く感じます。そもそもで堀辰雄もそのリルケの日本への紹介者でもあります。

続いてその『風立ちぬ』成立前の作品となり堀辰雄の出世作となる『聖家族』(1930)、また1934(昭和9)年に『物語の女』として書き始められ1941(昭和16)年に完結した『菜穂子』です。ここで文学史的に有名な小話に立ち入りますが、2作とも、モデルとして故・芥川龍之介片山廣子の「軽井沢」避暑地における晩年の恋、ならびに娘・片山総子と作者自身の分身との関係性も入り組ませた四角関係を堂々物語展開した作品になります。ちなみに「菜穂子」は今回のジブリ『風立ちぬ』でもヒロインの名前とされておりますが、堀辰雄の『菜穂子』に関して言えば、片山廣子の娘総子がそのモデルとされています。このモデル問題における「不躾」さ「無頓着」さで堀は片山親子の不興を買い、勝手に物語化された娘総子の縁談を案じて片山廣子が「あんな話は全部嘘だ」とわざわざ菓子折りもって関係各所に触れ回ったという逸話もあります。が、ここら辺は嘘かどうかが本当の所よくわかりません。

四段目の批評棚でも並べた江藤淳『昭和の文人』の有名な堀辰雄批判(村上春樹へのアテコスリ説とも言われてる)でもホリタツ片山親子に嫌われ説に乗っかっておりますが、その後、川村湊『物語の娘ー宗瑛を探して』において総子がモデル小説である『聖家族』発表後に「別荘に遊びにおいで」と親密な手紙を送っていることが判明したりしているなど、単なる迷惑な妄想虚構とも言えない局面もあったようで、また芥川の盟友であった室生犀星にはあいつら本当は逆だった(堀辰雄が母廣子好きで芥川が娘総子好き)的なこと暴露されたり、何だかいろいろ入り組んでおりますが、もう一つ同じく川村湊『物語の娘』で解明された聡子、堀辰雄、金文輯による半ば都市伝説的な三角形もあり、これに関しては後段で触れます。何はともあれ堀辰雄の芸術上の「代理父」でもあった芥川の死を乗り越えるための堀辰雄自身の必至の要請の中で生まれた作品と呼べます。

ここら文脈は2段目の芥川龍之介とさらに3段目の片山廣子につなげてまいりますが、一旦文学史的な堀辰雄は置いておいて個人的なオススメは実はこの『水族館』で、こちらは浅草踊り子モデル(これも実在のモデルがいる)の都市小説でモダニズム全開の都市のごった煮を描いた作風で、初期谷崎潤一郎・江戸川乱歩的な探偵小説紛いで堀辰雄らしからぬというよりは堀辰雄による「堀辰雄」以前のつまり『聖家族』公表の半年前の作品です。なんせ初出が春陽堂『モダンTOKIO圓舞曲世界大都會尖端ジャズ文學』ですからね。こっちで遊び暮らしていたらジブリで映画化されることも無かったかもわかりませんが(「軽井沢」でなく「浅草」のホリタツ!)いくつかある堀辰雄の浅草モノは他『不器用な天使』なども青空文庫で読めます。

最後に少し彼の批評『繪本』を持ってきましたが、永井龍男を論じながらコクトーの引用を持ってくるこの部分は堀辰雄の精神を実に良く現すところのものだろうということでピックアップしておきます。

「詩は、それのモチイフになつてゐるものにそれを引き止めるところの一切の糸を順次に、切らなければならない。詩人がその糸を一本切る毎に、彼の心臟は鼓動する。彼が最後の糸を切るとき、詩は自由になり、一個の輕氣球のやうに上昇する。それ自身の美しさを持ちつつ、地上とは何等のつながりもなしに。」

ー『繪本』堀辰雄

この部分はモデル小説を多く書いた作者の「嘘」の担保でもあったのでしょうが、こちら「空を憧れて」ますよね。

しかし!タイムアップ!駆け足ですすめたつもりがやはり全部書けなかった!25冊を一気に一回で紹介するなんて土台無理だった!一段目でこんな文字数費やしてしまい先が思いやられますが『【ジブリ『風立ちぬ』記念】”ホリタツ”堀辰雄で青空文庫を中心にブクログ棚こさえた【映画はまだ観てない】その2』ということで次回に!芥川と片山廣子=松村みね子の文脈から出来れば最後の金文輯の奇妙なSF(?)作品紹介まで行きたいと思います!

<つづく> 社主代理 持田


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