【変電社リブート宣言】満洲国変電書ツアー:竹内正一『哈爾賓入城』

正月三が日も明けてしまいましたが、新年あけましておめでとうございます。大変ド無沙汰しております。社主代理持田です。本年もご愛顧賜らんことをよろしくお願いいたします。

2013年7月から唐突に放置しっぱなしの当ブログでございますが何も言い訳は言うまい。全ては個人の諸事情にすぎません。ただいかんせん放置しすぎたので前回の続きは失敬ながらこっそり放棄させていただき、なぜならジブリ「風立ち」去ってから「かぐや姫」で某宮崎監督引退撤回かもわからない。有為転変は世の習いとはいえ世間様の流れがあまりにも速く人生はウサイン・ボルトの速度で走り去ります。

そんな中こんなニュースが昨年末12月28日に流れました。

国会図書館 電子書籍を配信へ —NHK NEWS Web
これまでに228万点の資料を電子化して保存を進めてきました。こうした電子化した資料をより多くの人に利用してもらおうと、来月21日から全国数10か所の公立図書館や大学の図書館などにデータを配信することになりました。配信されるのはすでに絶版になった書籍や古典、論文など一般には入手困難とされる100万点以上に上る資料で、利用者は、各図書館に置かれる専用の端末で読むことができるということです。

詳細は続報が待たれるわけですが、これは一昨年前の『エロエロ草紙』と同じようなリーダビリティ担保した「電子書籍」配信ではなく国会図書館のスキャニングデータアーカイブにアクセスさせるだけかと思いつつ、ただかの「近デジ」で公開されているような著作権利切れ及び権利処理したコンテンツ以外をも配信するということで間違いはないはずなので、なにはともあれ2014年1月21日にどんなものを出してくるのか(一挙228万点公開はさすがに?)期待して待ちたいところです。また難なく行ける図書館に配置された暁には社主代理突撃結果報告いたします。


変電社再起動宣言(第四宣言)

2013年振り返れば近デジ含む「国会図書館デジタル化資料」だけでなく諸々のデジタルアーカイブスに対する様々なアクションが活発になってきているような印象を受けており、変電社も暦上は2012/2013/2014と3年経過したので(勝手ながら2012年12月26日変電社宣言発布したので残日数6日の2012年を変電社元年として)やはりここで腹括って変電社リブート(再起動)せんと。

以前こちらも連載記事のつもりでやはり途中で放置してしまった過去記事でも書きましたが、僕は「現状未整備状態の「電子図書館」を無理矢理愉しんでしまっている」だけですから、いよいよ本当にそういう環境が整っていく方向にあるのであれば、変電社社主代理そらもう頭から突っ込んでまいります。

久しぶりだよ!変電書レビューの前段

さて無沙汰な癖に意気揚々と始めましたがこのまま久しぶりでコンテンツレビューをしないわけにいかないだろうということで新年一発目をまいりますが、とても個人的なお話から。この年末に酒飲んで某YouTubeうろうろしていたところ、「グリーンマイル」劇中歌で有名なフレッド・アステア「cheek to cheek」を日本語訳で日本人が歌っているんだけどこれ誰が歌ってんだろう?という話になり、こちらディック・ミネじゃないの?と流石の社中トルタル古田兄に教えていただいた経緯もあったのですが、その動画以下です。

こちらManchuria=満洲国/満洲帝国のドキュメンタリー(英語)になります。

またもう一つ個人的な話を続けますと、諸事情あって娘5歳をパパ(私)が寝かしつけした際に寝付けそうにない子供に子守唄にと昭和少年野球漫画の金字塔『キャプテン』名曲ED「ありがとう」を口ずさんだところ「うっさい」と娘に叱られました。

娘に叱られつつWikipediaで調べたんですね。たら

ちばあきお

作家の故ちばあきおが実は満州国奉天(現中華人民共和国瀋陽)出身であることを知りました。ちなみに兄ちばてつや氏の方は満洲で幼少を過ごしましたが東京出身だそうです。

そんなわけで年末に「満洲」ネタが続いたのでもう天に「行け」と言われているなと勝手にガッテンし、この年末年始は一人「満洲変電dig大会」となった次第です。

満洲国関連コンテンツについて

Flag_of_Manchukuo
満州国/満洲帝国の歴史に関しては特にここでは語りませんのでwikipediaでも『虹色のトロツキー 』でも参考にしてください。

もっとも以前より変電活動の中で「満洲」は視野に入ってきていたものの、その魚影を掴むには巨大魚過ぎたので、全体後回しにしていたわけですが、青空文庫では例えば日蘇通信新京駐在員として渡満し現地で没した逸見猶吉等の詩人や満映嘱託としての再度渡り敗戦後ソ連兵らの横暴ぶりと満洲モノとして展開した橘外男等もあり(ここらは別途取り上げたい)ますが、本丸国会図書館デジタル化資料において「満洲」キーワードだけで現段階2014年1月5日時点での「インターネット公開資料」11466件。また「国立国会図書館限定」24084件と全体でWeb公開資料の3倍にもなるので先ほどの図書館配信は待たれますね。地方の研究者にとってみれば非常なまでにありがたいのではないでしょうか。

もっとも研究者でもなんでもない読者団体変電社としては「インターネット公開資料」11466件にまず飛び込み何か面白いのあるかなと漁りまして、まずは今回はここら辺から参りましょう!というコンテンツを見つけました。

竹内正一『哈爾賓入城

哈爾賓入城表紙





哈爾賓入城:長篇小説』(コマ数199)
著者:竹内正一
発行日:昭和17(1942) 出版社:赤塚書房
国立国会図書館デジタル化資料「近代デジタルライブラリー」






この「竹内正一」なる人物が何者かと言うと、あまりWebにも情報ありませんが満洲中央に位置する哈爾賓(ハルピン)に存在した満鉄図書館の館長であり当時の満洲国で日本語による満洲文学を書いていた「在満作家」です。本作は1942年発表ですが舞台はその10年前「1932年満洲事変直下の哈爾賓(ハルピン)において満州国建国直前の日系人社会がこの事変にどう当たったか」のお話でもっとも正確な記録文学とは言えないであろう作品ですが、まず驚くのが最終陸軍中将まで上り詰めた哈爾賓陸軍特務機関長陸軍少尉柳田元三が序を書いている時局迎合小説でありながら外国の小説を読んだような印象を与えます。

哈爾賓(ハルピン)に住む単純な日本人青年「木場俊夫」が露西亜人社会の「フリガン」=不良少年らの中に混じり(渾名も俊夫=「トーシャ」)ながら時代の中を駆け抜けるある種のビルドゥングスロマーンなわけですが、彼の父親は借金抱えてロシア人ホステスの後妻と同居していて(その父親は物語の最初の段階でその借金精算のために「内地」に残してある田畑を売りに帰国)、その後妻ホステスに少しは働け穀潰しと罵られるニート生活に耐えられず家出して、日系銀行の語学屋パシリをしながら、ロシア人女給に惚れたり惚れられたり、日本人令嬢に惚れたり惚れられたり、また他の日本人もロシア人らと飲んだくれて楽しくダンスを興じたり、またちょうど哈爾賓で封切られているのがソ連映画『戦艦ポチョムキン』で仕事明けに見に行ったりなど、満洲の中でもロシアに徹底した開発をされてきた哈爾賓ならではのロシア語ネオン溢れる都市小説でもあります。

また話の中途でロシア移民が支那警察と衝突して暴動発生したり、あの時代の不穏な満洲は現在の中東アフリカの政情を観ているような気分になります。その中でその俊夫の友だちのロシア人は「日本のために手伝いたい」等と非常に殊勝なことを言ってくれ日本人とロシア人とはとても蜜月です。もっともロシア人とはいってもこちらは白系ロシア移民の話で、所謂ソ連=「赤」系ロシア人は徹底した「敵」として描かれています(暴動を煽動してる黒幕だったりします)。この時代の空気に関して神戸大学の新聞記事文庫にもいい記事ありました。まさにこんな時代だったわけですね。

東京朝日新聞 1929.7.26(昭和4)
北満を舞台に赤と白の争い東支鉄道のもつれにつけ込む白系露人

全体のトーンは後半になるにつれ事態は悪化し支那(中国)兵がなだれ込んでくるのではないかという不安が増せば増す程、在満日系人が「日本人」としての民族意識と使命に目覚めていく発展小説的プロセスが感傷的に描かれてはおりますが、トマス・マン「魔の山」にせよ第一次世界大戦に身を投じていくハンス・カストルプが描かれたわけで、この時代においては一つの常套解決であったと認識しておくのが大人です。またこれが時局迎合小説であったことを加味しても当時の外地日本人にとって日本軍部というものが如何にヒーローであったか。その対照として支那(中国)人が徹底して描かれていません。「敵兵」として視野に入ってくるのみで俊夫の近場に親しげな会話を交わした支那(中国)人は居なかったかの如くです。先ほどの赤系ロシア人と支那(中国)人の描き方はとても気になるところです。もっとも序を軍部特務機関長が書いているように満州国総務庁弘報処が徹底した検閲を行った時代ですが、そうであっても満・日・蒙・漢・鮮の五族協和の王道楽土の夢さえ不在です。

またラスト無事関東軍が哈爾賓入城し窮地に陥りそうであった現地日本人が救われると同時に俊夫の「父」が戻ってくるという大団円は意味深でもあります。俊夫は感極まって涙を流していますが、満蒙の地で「負債」をチャラにして戻ってきた「父」は、「対華二十一箇条要求」から「張作霖謀殺」と身動きとれないほど失策を重ねながら「満洲事変」でもってチャラにした関東軍と一緒に入城してくるわけです。

ちなみに竹内正一の他の満洲文学作品は『満洲の光と影 (コレクション 戦争×文学)』で「流離」という作品が読めます。

また『日満露在満作家短篇選集』昭和15年(1940)にも「故郷」という竹内正一作品が載っているようですが、2014年1月5日現在Amazonマーケットプレイスでなんと¥228,880 という価格をつけております。ちなみに20分の1くらいの価格でゆまに書房で復刊はされていいますのでコレクターズアイテムなんでしょうかね。

なお、こちら国会国立図書館デジタル化資料の館内限定においてはちゃんと所蔵されており、頭に戻りますが国会図書館 電子書籍を配信が待たれます。出来れば多摩地区方面の図書館でも期待しております。

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